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ポールソンの苦悩 [市場・運用]

香港3日目です。これだけの大嵐が吹き荒れているのに、経営幹部を全部集めて海外で会議が出来るというのは恵まれているような、申し訳ないような・・。

リーマンの次はAIGですか。保険契約者が世界中に7500万、従業員が130カ国で12万人いることを考えると、影響の深刻さは計り知れません。さらに、おそらくこちらのほうが短期的には深刻で、AIGはCDS(credit default swap)の本尊のような存在なので、もしも最悪の事態が起こると巨額のディリバティブが不渡りになり、連鎖がどこまで行くのかわかりません。当局も把握できていないような巨大な深遠な市場です。

日本にもアリコ、スター、エジソン、AIU・・と名だたる保険会社があります。そういえば、親会社の不振だけを理由にアリコは4-6月期に500億近い損失を出していました。アリコは代理店・直販チャネルはともかく、銀行窓販チャネルにも大きく頼るビジネスモデルだけに、巷間されている850億ドルのブリッジローンが成功したとしても、中長期的に業績には深刻な影響が残ると思われます。銀行員は少しもリスクのニオイのするものを嫌いますから。そういう意味では、世界中で展開している個人向けの保険販売は深刻なダメージを受けると思われるので、継続的に資産の切り売りをせざるを得ない状況に陥る可能性が大きいです。それぞれの現地で、まじめに経営している人たちには忸怩足る思いがあるでしょう。

証券に保険に次々と信用不安に陥る状況を見て、97年の日本を思い出しました。この感覚は香港に来ているほかの外人たちには実感として理解できないようです。うわさが広がり、株価が下がり、格付け会社がダメ押し・後追いの格下げを行う・・協栄生命、東邦生命、日産生命、三洋証券、山一證券、拓殖銀行・・毎週のように何かが起こった11年前の日本の状況そっくりです。都市銀行も11行から3行に集約されました。問題を表面化せずに8行破綻させたのと同じです。

唯一の処方箋は、当時の日本政府が行ったように、公的資金を投入して信用不安の連鎖を食い止めることだというのは、世界中の金融市場関係者には判っていることだと思います。しかし、米国当局は税金で私企業を救うことはモラルハザードの問題があるとして、リーマンを救済しませんでした。ベアスターンズ+JPモルガンには公的資金を入れたのに。

リーマンに関しては、従業員の平均年収が33万ドル・・といったニュースも流れ、議会でもそんな高給取りを救済するのか?といった感情的な質疑が行われています。これも、なんだかデジャブで・・。何年だったか忘れましたが、住専が次々と問題を起こしたときに、宮沢総理が「公的資金の導入を・」と言った瞬間に、マスコミから「高給取りの銀行員を救うために・・」といったきわめて近視眼的な批判が相次ぎ、世論も同調したことがありました、この一件で公的資金は禁じ手になってしまい、金融機関の連続破綻に繋がった訳です。ポールソンも、公的資金でリーマンを救うことが、経済学的には正解だと理解していても、その後に予想される感情的なバッシングで、更なる公的資金の投入という一手を塞がれてしまうことを懸念したのかも知れません。AIGを救済するためにリーマンを見送ったとも考えられます。

まだ本番はここでは無い、山はまだまだ先、ということかもしれません。
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