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電力需要が原発再稼働の理由ではない [市場・運用]

先週は、日本に居なかったので実感はしてないのですが、私の母校のある熊谷では、早くも30度越えを記録したそうで、夏ももうすぐです。

夏の電力需要のピークを前に、関西電力管内における電力不足から、原子力発電所の再稼働が主張されています。しかし、お粗末な事に4月23日に「16.3%の不足」と言っていたものが、その積算根拠の矛盾やいい加減さを指摘される度に「下方修正」をしています。

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「原発推進派」なる人達が居て、何としても原発を再開したいから無理矢理電力不足を演出している、という印象を受けますが、実のところ関西電力にとっては、そういう哲学論争では無く、何が何でも再開しないと困る理由が財務諸表から透けて見えます。

よく言われているのが、原子力は安価で、化石燃料が高価なため原子力を再開させないと、燃料費分だけ電力会社の収益を圧迫するというモノです。経産省の試算では、電力会社全体で7兆円近い負担増、関電では7000億円を超えるコスト増になると説明しています。

(ご興味があれば経産省のサイトをご覧ください)
http://www.npu.go.jp/policy/policy09/pdf/20120507/shiryo3.pdf

電力需給だけを見ると、そんなに切羽詰っているようにも見えません。関西電力の去年の原発を除くピーク時発電能力は、2610万KWHです。一方、去年の猛暑下での最大需要は2784KWH。関西電力管内は、関東と違い、昨年は節電をしていませんでした。節電をしたうえで、発電能力に余裕のある周囲の電力会社からの融通があれば、十分に賄えそうな水準です。

実を言うと、これが、関電にとって、更に困った問題なのです。

企業会計では、不要な設備は「減損処理」と言って、「最早、資産としての価値が無いのだから、資産から落としなさい。落とした分は損として計上しなさい」といことになっています。もしも、原発を使わなくても未来永劫電力が賄えるという事になり、原発の再稼働が行われないと、原子力発電設備全体と、貯蔵している核燃料合計を、全額では無いにしても減損処理するように監査法人から指摘される可能性が高くなります。こうなると、兆単位の金額の損が出て、債務超過→倒産の危機が目の前に迫ってきます。

そうなっては困るので、仕切りと「電力需要を満たせないから再稼働!」と言い続けているのだと思われます。原発が不要になり減損処理→債務超過の流れは、関電に限らずどこの電力会社も同じなので、どうしても「原発推進」をせざるを得ないのが実情のようです。

電力株の復権は難しいと思われます。


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日本株見通し3/15日 [市場・運用]

時事通信の取材を受けましたのでアップしておきます。

◎ある程度の悪材料を織り込む=〔株安反響〕
15日は不安感からの売りに加え、下げに便乗した売りが指数先物に出て、下落幅が拡大した。株式相場はある程度のリスクを織り込み、先物の中心限月が付けた7800円という水準がいったんの下値になるとみている。

これまでは「円買い・ドル売り・TOPIX売り」という動きが出ていたが、15日はこの巻き戻しが出始めている。現在のような状況下ではファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)面からの分析は有効ではないかもしれないが、輸出関連などは現状水準まで下落する必要はない。原発事故はさほど遠くない時期に収束の方向が見えてくるだろう。今後、予算などを含め、いつ復興にめどがついてくるかを注目しており、株式相場は不透明要因が晴れることであるべき水準に落ち着くと考えている。(了)


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株式市場見通し(2010年10月) [市場・運用]

今週、メディアの取材を受けました。日本株の仕事から今の仕事になって3年が経過するのですが、定期的に「私の相場観」というコラムの取材をしてくださいます。3年前までと違って、日常的に市場のことを考えている訳ではないので、「予告」をして来社されると、情報を整理したり、自分なりの見通しを考えたりすることになります。自分の記録のために、足元の景気・市場について、掲載しておきます。

世界・日本の景気動向

  • IMF2010-11経済見通し(2010年10月6日発表
    ( )内は前回(7月)からの変更

         2010             2011

世界経済     +4.8%(+0.2     +4.2%(-0.1)
新興国        +7.1(+0.3)       +6.4(0.0)
日本経済     +2.8%(+0.4     +1.5(-0.3)
米国            +2.6(-0.7)       +2.3(-0.6)
欧州            +1.7(+0.7)       +1.5(+0.2)

  • 先進国を除く世界(=新興国)は好景気に沸いている状況
  • 米国景気は大幅な今年・来年ともに下方修正されており、減速傾向にある。しかし景気の腰は思いのほか強いと考えたほうが良い。住宅、雇用の回復には時間がかかり2012年になろうが、金融政策の効果と財政政策の延長もあり、二番底シナリオは想定しない。
  • 日本は政策効果があり、今年は上方修正される程度に景気回復したが、来年は逆に下方修正。財政による底上げは限界があり、財政再建路線に走れば更なる下方修正もあろう。
  • 欧州は通貨危機をはさみユーロ安の恩恵から輸出国ドイツを中心に上方修正されているがそれでも潜在成長力以下。
  • 国税庁が9月に発表した、「民間給与実態調査」によると2009年の給与総額(平均給与x給与をもらっている人の人数)は前年から7.2%の減少。これは一時的なものではなく過去11年の趨勢。労働人口減少と給与所得の減少のダブル効果。
  • 平均給与は10年前462万円だったものが、昨年は407万円まで減少している。また、労働者人口は全く増えておらず、足元は高齢化もあり減少傾向。輸出や生産性の向上だけではカバーできず、GDPはマイナス成長で「当たり前」であり、プラスの成長をしていること自体、「とても頑張っている」状態だと考えてよい。
金融・通貨政策と為替
  • 日米は景気が減速傾向にあるため、金融政策はゼロ金利・量的緩和策を比較的長く続けることにならざるを得ない。このため、日米金利差は従来より小さくなり、どうしても円高傾向になる。
  • 民主党政権は通貨政策に不慣れであり、投機筋の格好の餌食になり円高を招きやすい環境にある。
  • 95年の79円台の頃との比較からは、円は高いとは言えず、対通貨バスケットでは更なる上昇余地があり、対ドルで高値を更新するのは時間の問題と考えたほうが良い。
円高ドル安の影響
  • 円高ドル安自体は日本経済にとって必ずしもマイナスではない。ドル建て輸入がドル建て輸出を大幅(10兆円以上)に上回っておりむしろプラス。
  • 輸出企業のシェアが高いTOPIX、日経平均などの株価指数にはマイナスとなるのは仕方がない。足元は米国株の上昇につられ、円高に逆行し、日本株も反発局面に入っているが、リバウンドの域を出ていないと考えたほうが良い。ほとんどの輸出企業が90円程度を想定した113月期の収益見通しを出しているので10円以上の乖離となると、他の経営努力では円高差損を吸収することは難しい。
  • 円高=不況という報道が多く、実際には内需にはプラスなのに、消費マインドに大きく水をさすのも問題。
 需給
  • 外人投資家は日本株に対して積極的に買うことも売ることも無く、当面はニュートラルと考えて良さそう。
  • 需給に対して大きな問題の一つは金融機関・事業会社(電力会社!)の節操の無いエクイティファイナンスで、1-9月のエクイティファイナンス(株式による資本調達)は41592億円(+41%)であった。本来、長期金利が1%台の環境では、借入れを増やし、株式を償却すべき局面で、ファイナンスを行うセンスが信じられない。
  • 金融規制の厳格化、バーゼルII、保険会社のソルベンシーマージン規制も金融機関がリスクを取りにくくなる方向であり、株式が売られやすい状況。
株価
  • 景気刺激策の終了、10-12月期以降の景気減速が消費マインドに水を差し外需・内需ともに頭打ち感が拡がると思われる。12月末の株価は日経平均で9000円程度、3月末では8500円程度ではないか。

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相場見通し [市場・運用]

日本経済新聞の電子版の取材で、目先の相場見通しについてお話したら「マネー・マーケットonline:コラム - 相場を読む」に8月18日に掲載されました。1週間経つので掲載しておきます。 

-----------(ここから引用)-----------

世界景気の減速懸念から株価は下落局面にあるが、あまり悲観はしていない。米国景気失速への警戒感は強いが、米サプライマネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数など、一部の経済指標市場予想を上回っている。潜在成長率は落ちているだろうが、雇用情勢のもう一段の悪化は考えにくく、米景気は緩やかながら確実に回復していくとみている。欧州では、独4~6月の国内総生産(GDP)の伸びにみられるように、ユーロ安が下支え役になっている。中国経済の拡大も中長期的に続くだろう。企業業績の回復が鮮明になるであろう10月以降から再び株価は上昇に転じるとみている。年末の日経平均株価は1万円手前ぐらいにはなるだろう。ただ、為替相場に左右されやすい相場環境であることには変わりないため、投資心理が簡単に楽観に振れる状況でもない。各国が新興国への輸出拡大を狙って通貨安政策をとるなか、日本円は買われやすい。日経平均のPBR(株価純資産倍率)は1倍に近い水準だが、投資家のリスク許容度は改善しておらず、割安だから買うという単純な話にはならないだろう。(聞き手は川路洋助)

--------(引用終わり)-------------

円高と株安を予測しているのですが、とりあえず、目先の1週間はその通りになってしまいました。

15年前の1995年に79円台があったのを明確に覚えています。当時、NYに在住していて、ドル建ての給与を貰っていたのですが、円換算の手取りがあっという間に減っていきました(笑)。ドルで給与を貰っていたので、ドルで貯蓄をしていましたから、翌年の春に帰国するときに、円転したら、「これしか貯金できてないのか」と悲しく気持ちになったのを思い出します。

15年前と比較して、日本の物価はほとんど上がっていません。牛丼やハンバーガーやカジュアルな洋服は当時よりも安いとさえ言えます。これは、モノで換算したときに、円の価値が上昇していることを意味します。一方、この15年間、他の先進国の物価は確実に上昇しています。すなわち、円以外の通貨の価値は15年前よりも下がっているわけです。

これを反映させると、円が高くなるのは「当たり前」です。84円で、日経新聞を初めとしたメディアが、政府の無策をバッシングし始めていますが、これはお門違いでしょう。80円を切って円高になっても、止まらないと考えた方がよさそうです。日本株と為替は90%近く連動しますので、しばらくは逆風です。まぁ、マスコミが円高を嫌がり政治にプレッシャーを与えるのは、輸出企業からの広告費が収入の大半を占めるのだから仕方の無いことですが(笑)。消費者や旅行者にとってはプラスの方が大きいのは明確なのですが。

加えて、下落しているのは日経平均だけではなくて、世界中の株式が下落トレンドにあります。日本株だけが逆行して上昇する理由もなく、もうしばらくはシンドイ相場かな、と思います。

ただ、企業収益は米国も日本も悪くありません。株価の最後のよりどころは、GDPでも雇用でも住宅価格でもなく企業収益ですから、悲観が行き過ぎたところで逆転すると考えます。しばらく株は静観して、市場の関心が企業収益に戻ってきたら、チャンスだと思います。


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日本経済・株式市場見通し [市場・運用]

先週メディアの取材を受け、以下の通り記事化されました。

(以下引用)

 4~6月期に続き、7~9月期も業績を上方修正する企業は多いとみられ、株式相場は秋ごろまで比較的堅調に推移しそうだ。ただ、上方修正といっても、期初の予想が悲観的すぎただけで、企業収益が本格的に回復してきたわけではない。世界各国の政策効果が薄らぎ、回復感が鈍化してくる秋以降、調整局面に入る可能性もあろう。 日経平均株価の上昇は1万1500円近辺までが限度。雇用などの遅行指標が改善してくるまでは、景気が回復軌道に乗ったと言い切れない。日本の場合、住宅バブルの傷が癒えるまで3年程度の時間がかかったことを考えると、米国を中心とした景気の本格回復が見えてくるのは2011年ごろになるだろう。

(引用終わり) 

1時間喋った内容が7行に纏められているのですが、概ね判っていただけるかと思います。年初来、ずっと弱気見通しだったのですが、基本的には最悪期は去った、と考えています。ただ、3月10日から昨日までの上昇局面は、やはり強烈な下落のリバウンドであり、企業収益の上方修正もかなり織り込んでしまったので、ここからは、景気の先行きが本当に見えるまでは、市場は一休みだと思います。


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株式市場の振り返り [市場・運用]

 年初に弱気見通しを出してから、もう5ヶ月経ちました。3月の前半にかけてかなりの下落をしましたがその後、政府の関与による金融不安の後退、景気刺激策への期待から世界の株価はかなり回復し、日経平均は現在9000円台の位置にあります。 市場や巷の論調も楽観的なモノが増え、「最悪期は脱した」「明るい指標が増えてきた」「株価底打ちへ」といったムードがコンセンサスになりつつあります。 

えっ?100年に一回の未曾有の危機じゃなかったの?とは誰も聞かないんですよね。もしも、こんな簡単に回復するのであれば、通常の景気後退期よりも、期間的には短かったことになります。本当でしょうか(笑)? 

私はここまでの回復はいわゆる「ベアマーケットラリー」だと考えます。下落局面での一時的反発局面のことです。大きな下げ相場が続く時、一方通行でずっと下がることはほとんど無く、3~5ヶ月程度の反発局面を繰り返しながら下落していくことが通常です。3月以降の上昇相場はまさにこれで、ボールを地面に強く叩きつけるほどバウンドも大きくなるように、2月までの下落が激しかった分、リバウンドも大きくなっているに過ぎないと考えるべきだと思います。 

根拠は山ほどあります。 

一つには、生産が「増加」に転じたと喜んでいる振りをしてる人が多いですが、在庫の整理がすんだせいで、減らした生産のほんの一部を再開しているだけです。生産の水準自体は全然ですし、コンスタントな成長に回帰しているわけではありません。 

米国の金融危機はこれからが本番の可能性があります。整理されたのは、まだリーマンとクライスラーの2社だけじゃないですか。住宅価格は下落を続けています。リバウンド的に一部の中古住宅販売件数が増加に転ずると「明るい兆し」などと報道されることもありますが、日本の不動産バブルの処理にかかった年月を考えると、まだまだ時間はかかります。 

中国の需要が日本の輸出を下支え、などという楽観論も増えていますが、中国がこれまで日本から輸入してきたものは、基本的にアメリカへの輸出拠点としての製造機械や部品がメインです。一方、最近の中国の需要は、鉄道だの道路だのの内需が中心なので、まぁコマツなどの建機の輸入は増えるかもしれませんが、ハイエンドの車や電化製品はまだまだと考えたほうがいいでしょう。

また、53兆円といわれる中国の景気刺激策もいつかわ効力が切れるので、その後のことを心配した方がよさそうです。 

日本の国内で薄型TVがやっと売れ出したなどという明るい兆しもありますが、TV自体が更新需要(買い替え)しかないので、経済成長にはさほどの貢献は考えにくいです。 米国が財政出動や金融機関の救済で100兆円近い財政赤字を増やすといわれており、どう考えてもドル安円高基調からは逃げられません。日本の輸出産業にとってはまだまだ厳しい環境が続きそうです。


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2009年、相場見通し [市場・運用]

明けましておめでとうございます。今日の大発会は随分と上昇して終わりました。今年の市場、特に日本株の相場観について纏めておきたいと思います。

  1. PERで見た現在の株価の位置
    昨年10月に急落した時のPER(株価収益率)は一瞬でしたが10倍を切りました。それまでの2、3年間概ね13倍~20倍の間で推移していましたので、かなり割安になったと感じた向きもあったかと思います。しかし、PERは株価が上がらなくても、企業収益が減少すると、上昇(=割高になる)してしまいます。12月末の状態で、PERは既に15倍を超えています。新興国市場が8倍程度、世界株全体で10倍程度であることと比較して、割安感はありません。しかも、日銀の統計では、2009年3月期の税引き後利益こそ、20%の減益になっていますが、売上はまだ3%の増収を見込んでいます。12月に発表された鉱工業生産が、前年比16%のマイナスだったことを考えると、売上は10%程度の減収になると予想され、PER15倍の前提になっている企業の収益見通しがまだ甘い計算になっていると言わざるを得ません。仮に2009年3月期に30%の減益を見込むとすると、日経平均で9000円という株価水準は、PERで18倍近い水準になります。ここから先の上値は限られていると見たほうが安全だと思います。
  2. 2010年3月期、増益するのか?
    もしも、現在の株価水準を正当化できる何かがあるとすると、市場が、2010年3月期の増益を織り込みに行っている、という理由しかありません。しかし、米国の住宅市場や雇用環境を見るところ、1年程度で景気が底入れをして上昇基調になる兆しは全くありません。むしろ、金融不安はある程度落ち着いたものの、景気の低迷はその端緒についたばかりと考えた方が良いと思われます。これに対して、企業は、なりふり構わない合理化・コストカットで対応を開始していますが、これが却って消費者の心理を凍りつかせており、国内外の消費の低迷を招くという悪い循環に陥っています。生産を20%も減少させたのに、まだ在庫が増えている状況が如実に物語っています。この在庫が減少に転じ、生産が増加に転じ、雇用と消費にある程度の明るさが戻ってくるまでにはまだ時間がかかると思います。今年の前半は、アメリカの新大統領の就任に対する期待感や、大型の財政出動などで一息つく場面もあると思いますが、そうした効果が出尽くした秋以降、また経済と市場が下向きになる可能性が高いと思います。加えて、米国における巨額の財政出動は、国債の増発に頼らざるを得ず、ドル・円の為替レートはどうしても円高傾向の圧力が続くと考えます。輸出産業にとっては、さらに厳しい環境が続くと予想します。今年の3月期の決算で30%の減益、2010年の3月期で更に20%の減益を織り込むとすると、株価はPER14倍で日経平均5500円程度、PER20倍で7900円程度のレンジになります。4-5月に新年度入りして、決算発表時の年度見通しで弱気な数字が並ぶ時期には、株価への下押しの圧力がかかる可能性が高いと考えます。日経平均で6000円以下の水準も覚悟しておいた方がいいでしょう。
  3. ではいつ買えばいいのか
    日本で90年にバブルが崩壊してから、18年が経過しますが、未だに長期的な往来相場が続いています。今回の景気後退の構造的な深刻さを考えるならば、こうした往来相場がある程度長期にわたって続くことを覚悟しておいた方が良いかも知れません。しかし、一方で、世界に60億人の人口がある以上、モノが何も売れなくなる、ということはありません。自動車にしても買い替えを1-2年我慢できたとしても5年も我慢することはできません。必ず、不況の後には景気の回復局面・増益局面が来るはずです。この観点からは、今年は絶好の投資チャンスだと捉えるべきだと思います。日経平均で6000円程度に差し掛かったら、投資のタイミングと考え、2-3年のタイムホライズンで仕込んではどうでしょうか。10年単位の長期投資には向かないと思いますが、取り合えず、2-3年程度の中期投資のタイミングは今年やってくると思います。

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クラッシュ、それでも人生は続く・・ [市場・運用]

日経平均が8200円、ダウが8500ドル台になりました。9月18日に「市場から距離を置こう」とコメントしたときの日経平均が11700円程度でしたから、3週間で30%の下落でした。まさかこんなに早いと思っていませんでした。理論的な株価はもう関係なく、何しろ手元の現金を増やしておきたい、という恐怖心理に拍車がかかった3週間でした。

そろそろ買ってもいいのでは、という声・質問も聞こえてきます。確かに短期間のリバウンドはあるかもしれません。今回の下落のスピードの速さは、市場の恐怖感やパニックのなせる業だと思いますが、下落の幅自体は、それだけでの理由でこれだけ下げたのでは無いと思っています。

視線がマーケットに釘付けになっていたこの半年間で、随分と世界景気の低迷が顕在化してきました。米国の失業率や求人の突然の悪化、日本の貿易赤字化、中国経済のスローダウン、ロシアの政治リスクの顕在化・孤立化。つい1年ちょっと前まで、6%近かった世界経済の成長率が、いまや3%、恐らくもっと減速すると思われます。市場は世界景気の悪化事態を織り込み始めています。これまで市場が前提としていた企業収益からは、今の下落した水準は、割安に見えますが、例えば2年連続20%減益するとしたら、まだまだ割安とは言えない可能性もあります。

経済の減速に対しては、金融を刺激してお金の回転を良くすること(=金融緩和)が、教科書的な処方箋です。しかし、銀行同士がお互いを怖がって、全くお金を融通しなくなってしまっています。日銀を始めとする各国の中央銀行が、仲立ちをしてやっと細々と短期市場が呼吸を止めずに喘いでいる状態。これでは、金融面での景気刺激は無理です。景気後退が深く長いものになる可能性が高いということです。

こういう事態の時にしなければならないことは明確で、まず、銀行同士の疑心暗鬼を取り除くために、銀行の資本力を強化すること、すなわち公的資金を強制的に注入すること、そして、各国が景気刺激策、この場合減税ではなくて公共事業を行うことです。(減税しても、今の消費者マインドでは、全く消費には回りません。国が代理にお金を使うしかないのです。)

今週末、G7会合がありますが、私ですら判るこんな単純な理屈は、彼らも百も承知だと思います。では、具体的な政策が表明されるでしょうか?

残念ながら、これも、かなりの困難が伴うと思います。なぜならば、かれらの母国の選挙民達はみんな、私企業(=金融機関)に税金が回ることを、嫌悪するからです。90年代の日本で次々と証券・生保・銀行が破綻したときもそうでしたし、今の欧米の状況も同様です。ポールソンの苦悩は世界中の金融当局者の苦悩です。

更に、新聞を読んでいると、悲しくなるくらい新聞記者は今何が起こっているのかを理解していないことに気づきます。何故、株価が下がってるのか、何故、日銀が流動性を供給しつづけなければならないのか、最悪の事態を避けるためには、金融機関の税による健全化が何より大事だ、と読者に訴求している記事は見かけることがありません。

この民主主義の現状で、各国首脳が集まっても、具体的な政策を声高に唱えるは、難しいことだと思います。

混乱はまだまだ続きそうです。落ちてくるナイフを掴もうとしないことです。


ついに米国銀行破綻・・ [市場・運用]

週末まで耐え切れずにワシントン・ミューチュアルが破綻してしまいました。資産規模3000億ドル(30兆円)の大銀行の破綻です。ベア・スターンズに引き続き、JPモルガンがたった19億ドル(2000億円弱)でこの銀行の資産を買い取りました。恐らくかなりの割安です。

市場の噂から、いつかは、と思っていたので、この破綻自体は驚きではないのですが、週末まで持たなかったことが驚きです。破綻処理に対する政府のコントロールが失われつつあることの証左です。恐らく、情報が漏れ出して、大規模な取り付け騒ぎに発展する可能性があり、慌てて倒産させたのかもしれません。テレビやインターネットで、銀行の窓口に長蛇の列が出来ているシーンや暴動まがいのシーンが流れることを、嫌ったのだと思われます。

金融安定化法案についても、ブッシュ大統領が涙目になりながら必要性を訴えているにも関わらず、すんなりと議会を通りません。すでに議事日程は終了ですが、この週末の延長戦で何とか目鼻が立たないと、来週の月曜の世界のマーケットは、また違った風景になると思われます。今回は東京は休みではないので、プレッシャ-の最前線に再度立たされることになります。

ほとんどの市場関係者が経験したことのない状況が当分続きそうです。


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これからの株式投資をどう考えるか [市場・運用]

世界的に株価の下落が止まりません。お金の流れが安全資産に向かっています。株から金へ、ドルから円へ、債券から現金へ・・。アメリカの短期金利が0.2%に下がっています。どこにリスクが潜んでいるのか判らず、誰を信じていいのか判らず、市場関係者が悲鳴を上げながら逃げ回っている状況です。

昨夜、米国株が4%下落し、アジアの市場も軒並み下落しています。PER、PBRといった指標で見るとかなり割安に見え、市場が健全な状態であるならば、個人投資家にとってはそろそろ買い始めても良い状況に見えます。7月の頭までは、「買い場が近い」というコメントを私も出していました

しかしここは、個人的には方針変更したいと思います。理由は二つです。

1.2002年からの上昇相場が完全終了
長期的な上昇相場が完全終わってしまったと思われます。チャートのどの指標を見ても下を向いています。相場ですから下げたら上げるというリバウンドはあると思いますが、一度上昇の終わった相場は3年程度低迷します。下落の始まりが去年でしたから、まだ1年半は低迷が続くと考えたほうがいいと思います。

2.市場の機能が壊れてしまった
株式も債券も、所詮は「紙」に書いてある金額です。これを売買するには、その紙に書いてあることが正確に履行されるという相互の信頼関係が必要です。AIGやリーマンやメリルが破綻する市場で、これからも誰がどこでどんなリスクを抱えていていつ破綻するか判らないという状況下で、この「信頼関係」がどこかに行ってしまいました。一度失われた信用の回復には、努力と時間が必要です。これは抜本的な政策発動などで、一朝一夕に回復するものではありません。

今起こっていることは、大恐慌と呼ばれた1932年の状況よりも悪いのかもしれません。自分の手元の流動性を大事にして、ある程度市場から距離を置いておく姿勢が必要です。日本のバブルがはじけた1990年にも、下落するたびに、「絶好の買い場!」と訳知り顔でお金を注ぎ込んでいる人達が結構いました。そうならないように、現金(円とは限りません)と収入を大切にしましょう。下落とリバウンドを繰り返しますから、腕に覚えのある人には面白い相場かもしれませんが。

2週間続いた出張生活もやっと終わりです。午後には日本に帰れます。愛犬に会えるのが楽しみ☆。
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ポールソンの苦悩 [市場・運用]

香港3日目です。これだけの大嵐が吹き荒れているのに、経営幹部を全部集めて海外で会議が出来るというのは恵まれているような、申し訳ないような・・。

リーマンの次はAIGですか。保険契約者が世界中に7500万、従業員が130カ国で12万人いることを考えると、影響の深刻さは計り知れません。さらに、おそらくこちらのほうが短期的には深刻で、AIGはCDS(credit default swap)の本尊のような存在なので、もしも最悪の事態が起こると巨額のディリバティブが不渡りになり、連鎖がどこまで行くのかわかりません。当局も把握できていないような巨大な深遠な市場です。

日本にもアリコ、スター、エジソン、AIU・・と名だたる保険会社があります。そういえば、親会社の不振だけを理由にアリコは4-6月期に500億近い損失を出していました。アリコは代理店・直販チャネルはともかく、銀行窓販チャネルにも大きく頼るビジネスモデルだけに、巷間されている850億ドルのブリッジローンが成功したとしても、中長期的に業績には深刻な影響が残ると思われます。銀行員は少しもリスクのニオイのするものを嫌いますから。そういう意味では、世界中で展開している個人向けの保険販売は深刻なダメージを受けると思われるので、継続的に資産の切り売りをせざるを得ない状況に陥る可能性が大きいです。それぞれの現地で、まじめに経営している人たちには忸怩足る思いがあるでしょう。

証券に保険に次々と信用不安に陥る状況を見て、97年の日本を思い出しました。この感覚は香港に来ているほかの外人たちには実感として理解できないようです。うわさが広がり、株価が下がり、格付け会社がダメ押し・後追いの格下げを行う・・協栄生命、東邦生命、日産生命、三洋証券、山一證券、拓殖銀行・・毎週のように何かが起こった11年前の日本の状況そっくりです。都市銀行も11行から3行に集約されました。問題を表面化せずに8行破綻させたのと同じです。

唯一の処方箋は、当時の日本政府が行ったように、公的資金を投入して信用不安の連鎖を食い止めることだというのは、世界中の金融市場関係者には判っていることだと思います。しかし、米国当局は税金で私企業を救うことはモラルハザードの問題があるとして、リーマンを救済しませんでした。ベアスターンズ+JPモルガンには公的資金を入れたのに。

リーマンに関しては、従業員の平均年収が33万ドル・・といったニュースも流れ、議会でもそんな高給取りを救済するのか?といった感情的な質疑が行われています。これも、なんだかデジャブで・・。何年だったか忘れましたが、住専が次々と問題を起こしたときに、宮沢総理が「公的資金の導入を・」と言った瞬間に、マスコミから「高給取りの銀行員を救うために・・」といったきわめて近視眼的な批判が相次ぎ、世論も同調したことがありました、この一件で公的資金は禁じ手になってしまい、金融機関の連続破綻に繋がった訳です。ポールソンも、公的資金でリーマンを救うことが、経済学的には正解だと理解していても、その後に予想される感情的なバッシングで、更なる公的資金の投入という一手を塞がれてしまうことを懸念したのかも知れません。AIGを救済するためにリーマンを見送ったとも考えられます。

まだ本番はここでは無い、山はまだまだ先、ということかもしれません。
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リーマン破産申請 [市場・運用]

先週はNYで今日から香港。なんだか忙しい。ホテルにチェックインしてTVをつけたらCNBCで延々とリーマンの破産申請のレポートしています。

生まれて初めてNYに行ったのがトレーニーで当時のシェアソン・リーマンに行った時でした。1990年、もう18年前です。日本では、リーマンもゴールドマンもモルガン・スタンレーもメリルリンチも一緒くたにして「投資銀行」と呼びますが、リーマンやメリルリンチは当時から「ブローカー」と呼ばれていたと思います。事実、収益に占める投資銀行業務の比率は、比較的低かったことを記憶しています。

歴史がある一流のゴールドマンのような「投資銀行」と比較してリーマンやメリルのようなブローカー母体の会社の投資銀行部門には、なんとも言いにくい劣等感があって、いつか追いついてやる、というギラギラした感じの人が多く在籍していたのを覚えています。老舗のゴールドマンのような会社は、主要な優良企業を顧客としてすでに囲いこんでいるため、新規参入者が入りにくい閉鎖された市場です。

リーマンやメリルは、その後投資銀行業務に注力して今日に至るまで、売り上げを伸ばしてきました。ありとあらゆるものを「証券」にしてしまう証券化業務が拡大することに比例して、リーマンやメリルの投資銀行業務も拡大するのですが、やはり、新規参入者が獲得した市場はリスクの高い市場だったようです。住宅市場のバブル崩壊と信用収縮の過程で、この2社が立ち行かなくなってしまったようです。

もともとブローカーですから、投資銀行業務で優良な顧客を抑えているわけではなく、買収する側から見ても、食指が動きません。韓国の銀行などが、取りざたされましたが、結局、買い手が見つからず時間切れになってしまいました。メリルについては、バンク・オブ・アメリカが救済合併することになったと報道されています。リーマンよりは、客層も良く、リテール業務で強いのが魅力になたのだと思われます。

今夜の米国市場と明日の日本市場は大荒れが予想されます。今日は、日本は敬老の日ですが、中国も韓国も祝日で(中秋の名月の休みだそうです)欧州から市場が始まっていますが、ロンドン市場もかなり下げています。為替は世界的にドル安です。

3月11日のベアスタンズの救済あたりが今回の下落相場のターニングポイントになるかと思っていたのですが、少し楽観的すぎたようです。まだ終わった感じがしません。
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アイオワです [市場・運用]

出張でアイオワ州デモインに来ております。月曜の午後からNYに移動です。
こっちでアメリカの失業率の数字を知りました。6.1%。これは驚きです。ついこの前まで(2月まで)日本と同じ4%台だったから、あっという間に悪化している。消費が経済を支えている国での失業率の悪化は致命的とも言えます。インターネットバブルの崩壊から立ち直りかけた5年前の水準に戻ってしまいました。株価は一日前に急落していたせいか、無反応でしたけが、まだ終わっていない・・感じです。

株の下落は実態経済よりも需給にやられたのかも知れませんね。原油が下がったので、穴埋めで株を売ったヘッジファンドがあるやにうわさされています。原油も140ドル台から100ドルへ。いい感じに下落してますが、あと10-20ドルは下がって欲しい。実体経済のためには。そのあたりで、株価も底が見えるのではないかと思います。

先週、アメリカの不動産投資家と東京で話す機会がありました。彼の目には東京の不動産は今が買い時に見えるそうです。メガバンクがびびって融資を引き上げて不動産会社が次々と黒字倒産しているのは、とても良いチャンスだといっていました。そういう意味では、株もそろそろ長期の仕入れ時だと私は思うのですが。
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日本株をめぐる環境 [市場・運用]

日経Net Plusに寄稿しました。参考までにここにも載せておきます。
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日本株市場を巡る環境は極めて悪い。原油の99%、食料品の64%を輸入に頼る日本経済は、世界的インフレのダメージが最も強い経済の1つであろう。サブプライムショック後の米国の利下げによる円高と相まって、企業経営者や市場参加者のマインドを一気に冷やしている。

 事実、2008年度の企業収益はかなり減益の見通しとなっている。また、原材料費の高騰は賃金据え置きの格好の「口実」となっており、物価高もあって内需は当面期待できそうにない。

 輸出がダメで内需もダメ、原材料の高騰に加えて円高では、日本株を巡る環境は八方ふさがりである。だからこそ、10日間も続けて下落しているのだ。

 では、今後はどうか。市場は悪材料を織り込んでしまえば、そこから先はある程度の悪材料には反応しなくなるものだ。既に、米国経済の後退や日本経済の減速、企業業績の落ち込みやある程度の円高、そして商品相場の高騰は織り込まれたのではないだろうか。今後も似たようなニュースは続くだろうが、市場にとってのサプライズ度は既に下がっており、相場は反応しにくいはずだ。

 今の株式市場にサプライズが起こるとしたら、株価にポジティブな材料の方がインパクトは強い。最も想定されるのは、商品市況の沈静化だ。商品市況が沈静化すれば、資源を持たない国から資源国への富の移転は止まる。インフレ圧力も弱まる。

 市場の歴史を振り返ると、金融危機が起こると財政・金融政策が緩和的になり、思わぬところにバブルを生む、ということを繰り返している。1987年のブラックマンデー後の日本の不動産バブル、98年のロシア危機の後の米国のインターネットバブル。そして07年のサブプライムショック以降の商品相場も後で振り返れば「バブル」だったということになるだろう。

 日本株を取り巻く環境は極めて悪い。しかし、買い場は近いと考えたい。

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