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本二冊 [本・映画]

仕事でロンドンに来ています。

来る途中の飛行機の中で本を二冊読みました。一つが五木寛之の最新刊「人間の覚悟」、もう一冊がロンダバーン「ザ・シークレット」。悲観と楽観の両極端みたいな話ですが、両方世相を反映していると思います。

「人間の覚悟」は五木寛之の歴史観と観察眼から、国家としての日本や資本主義社会がは既に数十年という長い期間にわたるであろう下降局面を迎えつつあると見ています。この下落局面を人生の終盤を迎えつつある著者の人生と重ね合わせて、「覚悟して向き合えば決して悪いものでもない」と論じています。 

「ザ・シークレット」はいわゆる「引き寄せの法則」について初心者向けに書かれた本で、ルーツは「思考は現実化する」といった成功本とスピリチュアルを融合させた内容です。「こういうことが起こって欲しくない」と念じると「こういうこと」が起こってしまうので、「こうなって欲しい」とイメージしながら念じ続けるとその状態を「引き寄せる」ことが出来る、という内容です。 

ロンドンも不景気です。人と話すとリストラや、賃下げなど冴えない話ばかりが耳に入ります。自分の会社にしても、半年前と何も変っていない、むしろビジネスは上手く行っているのに、株価はかなり不安定です。今、経済や金融市場に起こりつつあることは、五木氏が指摘するように、数十年にわたる、資本主義社会の下降局面なのかも知れません。確かにそういう要素もあります。 

一方、「シークレット」的な見方をすると、不景気の「気」はあくまで気持ちの気であり、人々の悪い想像や「こうなって欲しくない」という念が世界的に現実化して、今の事態を招いていると説明できるかもしれません。確かに、リーマンショックの翌日から東京のタクシーの売上が目に見えて下がっているらしく、これはロジカルな説明は難しい現象だと思います。また、逆の見方をすれば、困難な現状に何がしかの光明を見出したい世相が、この本をベストセラーに押し上げているとも言えそうです。

 夕べ、ロンドンの米系運用会社のファンドマネジャーから、日系の運用会社のトレーダーに転職した20年来の友人とパブでぬるいビールを飲みながら話しました(何故かイギリスのビールは室温でぬるい・・)。彼はファンドマネジャーとして優秀だったのですが、日本に転勤を命じられて、家庭の事情でロンドンに残るために止む無く転職しました。大幅なベースダウンに見舞われながらも、結構明るく喋っていました。一般的に、一度上げた生活レベルは下げられない、などといいますが、彼を見ると、必ずしも真実では無いと思わせられました。

「収入の3分の一が、子供の教育費にかかっちゃいますよ~」と一人息子を有名なパブリックスクールに通わせていることが、彼の人生の支えの一つになっているようで、ある種の爽快感を覚えました。 彼の子供が通う有名パブリックスクールのPTA達も以前は、夫の収入を暗に自慢するSnobbishな奥様達が多かったのが、ここに来て不遇をかこっている人たちも増えてきているようで、謙虚な人たちが増えて逆に以前より付き合いやすくなった、と不景気の効用のようなことを言っていたのが面白かったです。 

企業や経済は、「成長」というものが当たり前のようにビルトインされています。日本の経済もたった半年間マイナス成長するだけで大騒ぎ。多くの企業も、収益が減っただけで大騒ぎです。赤字じゃなくて減収しているだけなのに。人間の方は、このロンドンの友人やPTA達もそうだけど、収入の範囲内で生活することで、何とか生活を適応させることが出来るようです。私自身の失業経験からも、数ヶ月の無収入の状況は、今思えば、それほど深刻なものではありませんでした。

騒いでいるのは、マスコミや官僚のような失業経験も無ければ、収入減の経験も無い人達がパニック的に騒いでいるような気もします。心のどこかで、資本主義の成熟や老化を意識しながらも、ネガティブなイメージを避けるように、悲観的なニュースフローからは当面を距離を置いた方が良いと思いました。


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