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「Always3丁目の夕日’64」と「しあわせのパン」 [本・映画]

今週は米国出張中です。月・火・水ニューヨーク、木デモイン(アイオワ)、金ロサンジェルスという過酷なスケジュールです。やっと二日目が終了しました。

NYに来る途中の飛行機でみた映画二本の感想です。

「Always3丁目の夕日’64」
最初の二作品は1958年、昭和33年が舞台でしたので、その7年後の続編ということになります。自分が’61年生まれなので、戦後を色濃く残す前二作より、幼児の時代の記憶と重なる部分がありました。新幹線の開通と東京オリンピックの年で、日本が伸び盛りの新興国だった時代で誰もが昨日より今日、今日より明日がきっと良くなると信じていた時代背景があります

時代背景もあり、前作にあった借金のカタの身売りや、母親に捨てられて養子になるといった、悲哀は影を潜め、幸せとは何か、生きる目標とは何かというテーマを少し恥ずかしくなるくらい正面から扱った話になっています。結婚式など幸せなシーンが多く、その分、泣きたくなるシーンは格段に少なかったでしょうか(笑)?

主人公陣もいいのですが、欲目でしょうか、やはり小雪さん演じる茶川先生の新妻がとても良いです。

「しあわせのパン」
北海道の洞爺湖の実在の地名「月浦」でパンを焼く夫(大泉洋)、カフェ「マー二」を営む妻(原田知世)の夫婦を中心に夏・秋・冬・春の4話の短編的なストーリーが展開する映画です。見ていると、何しろパンが食べたくなります。物語はそれほど印象的では無いのですが、静かに、清潔に淡々と進んでいきます。映像と空気感を楽しむ映画だと思いました。夫婦がどう見ても30歳前後にしか見えないのですが、原田知世って44歳で大泉洋よりも7歳も年上。本当に驚きました。


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熊谷達也「邂逅の森」 [本・映画]

月夜の雪山は、漆黒の闇の中で銀色に浮かび上がっています。その風景を初めて見たとき、「怖い」と思いました。晴天の元でも、頂上から麓まで厳しい氷雪に覆われた山を仰ぎ見るとき、怖れと畏敬の念が湧いてきます。この感情というか感覚は、動物としての人間が先天的に持っているものでは無いでしょうか。

この小説は、過酷な秋田の冬山を舞台にした、マタギが主人公の話です。東北の寒村における貧困とはどういうものであったのかを、緻密に描きながら、明治・大正期のマタギというものを題材にした話なのですが、私にはラブストーリーと思えました。ただ、美しく現代的な「恋愛」などではなく、因習や貧困、義理人情や打算・・といったなかで細々としかし力強く続く多少動物的テイストの性愛のストーリーと言ったほうがいいかもしれません。 

熊狩りやカモシカ狩りの描写は見事です。リアルなだけでなく、生きているものの命を貰って生きていかなければならない人間にとっての自然への尊敬と畏怖がびしびしと感じられました。直木賞受賞作品です。


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村上春樹 [本・映画]

1Q84が上梓しされて直ぐに買って読みました。恥ずかしいことに、村上春樹の小説を手に取るのは初めてでした。信者とも言えるような熱狂的なファンが多く存在する小説家、というだけで逆に手に取るのを躊躇してきていたような気がします。

1Q84はBook1Book2の二巻で、青豆(女性)と天吾(男性)という二人の主人公のストーリーが交互に展開します。比喩や引用が多いため、本当の意味での作者の意図を把握するためには、欧米文学や音楽、歴史などにかなりの幅広い知識と教養が要求されると思います。 

自分自身、とてもその域に届いていないのと、そもそもこの作家の小説を読むのは初めてなので、評価どころか感想を述べるのも憚られるのですが、面白かった、と思います。「村上ワールド」と表現される世界観に加え、なんと言っても登場人物が魅力的です。これは主人公の二人だけでなく、それ以外の人物設定が緻密で独特です。1Q84を読み終わった読後感は「面白いんだけどよう判らん」というものでした。ファンの間では、「続きがあるはずだ」と巷間されているようですが、私もそのように感じました。

よう判らん、ままで放っておくのも癪なので、その後、他の作品も手にとってみました。「海辺のカフカ(上下)」「ねじまき鳥クロニクル(1,2,3)」「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド(1,2,3)」を読んでみました。気がついたらこの夏は1Q84に始まり4作品10冊もの村上作品を読んだことになります。

以前の作品は、1Q84に比べると、性的描写や暴力的表現が穏やかで、その分読みやすいと思います。面白いのですが、よう判らん、というの読後感は全てに同じだと思いました。恐らく、ディズニーランドなどのテーマパークに行って、何かを判ろうとすることが愚かなのであって、村上ワールドを純粋に楽しめばいいのかもしれません。


映画4本 [本・映画]

インフルエンザの流行を物ともせずに、アメリカに1週間出張に行きました。確かにCNNは連日騒いでますが、アメリカ人は全然気にしてませんでした。死亡率は普通のインフルエンザよりも低く、大騒ぎする理由が見あたりません。タミフルに耐性のあるウィルスが増えているので、今の内に騒ぎを作って在庫整理をしてしまえ、というような裏の動機があるのかもしれませんね。「メキシコはタミフルの備蓄をさぼっていたので致死率が高かった」などという報道はまさにそんな感じでした。

今回の往復の機内は見たい映画が多く、5本の映画を見ました。以下、4本分メモ代わりに・・。 

グラン・トリノ

主演監督クリント・イーストウッドの評判作です。グラン・トリノとは、70年代に米国を風靡したフォードのスポーツカー。フォードをリタイアしたエンジニアの70歳絡みの老人が30年以上大事に磨きながら綺麗に乗っている車です。古いものや古い価値観が現代社会に生き残っていることで、逆に光を増すことの象徴としてこの車の名前を題名につけたのかもしれません。親父が強く怖くそして真の意味で男らしかった頃そのままに描かれた主人公は、映画の前半はただの頑固ジジイなんですが、だんだんとその憎まれ口の後ろにある優しさ、愛、過去を引きずる苦しみみたいなものがジンワリと伝わって来るいい映画です。なまじヤサシイ私などは、絶対こんないい感じのジジイにはなれないと思わされました。見る価値あります、この映画。 

マジソン郡の橋

少し古い映画なのですが、同じクリント・イーストウッド監督・主演のこの映画も見ました。奇遇ですが、舞台になっている、アイオワに出張していたのです。小説が流行ったのは15年も前で、その頃やはり、このアイオワに居住していました。何故か日本人観光客が片田舎の橋を大挙して見に来ていたのを思い出します。小説は余り面白くなかったので、映画は封切時には見なかったのですが、迂闊でした。映画は秀逸でした。何しろメリル・ストリーブがいいんです。言ってしまえば四日間だけの不倫の話なんだけど、中年の女性ならではの色気を清潔に演じながら、主人公の葛藤や決意、心情の移り変わりを美しく表現しています。クリント・イーストウッドは脇役に追いやられてます。 

イエスマン

ジム・キャリーのコメディ。いやいや出席させられた成功哲学のセミナーに教祖らしきヒトから「なんにでもイエス」ということを約束させられ、大変な目に会いながら何だか人生が好転していく・・というバカバカしいお話。バンジージャンプをさせられ近所の婆さんの誘惑にまで「Yes」だから悲壮なんだけど、ジム・キャリーにかかると「次は何だ」とワクワクさせられます。 

スラムドッグ$ミリオネア

主人公は全く教育・教養の無いはずのお茶汲みの若者。「ファイナルアンサー」という番組のインド版で次々と難問をクリアしてしまい、詐欺の疑いをかけられ尋問されるのですが、何故それらの問題の回答をたまたま知っていたかという子供のことからの回想シーンを中心に作られた物語です。悲惨で厳しい過去が、インドの発展と貧困をあぶり出しにするのですが、最後は何とかHappy Endになるので、後味は救われた気持ちになります。音楽も何だか知らない音楽なんですが、いいんですよ。必見だと思います。映画館に行って見たいと思いました。   


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本二冊 [本・映画]

仕事でロンドンに来ています。

来る途中の飛行機の中で本を二冊読みました。一つが五木寛之の最新刊「人間の覚悟」、もう一冊がロンダバーン「ザ・シークレット」。悲観と楽観の両極端みたいな話ですが、両方世相を反映していると思います。

「人間の覚悟」は五木寛之の歴史観と観察眼から、国家としての日本や資本主義社会がは既に数十年という長い期間にわたるであろう下降局面を迎えつつあると見ています。この下落局面を人生の終盤を迎えつつある著者の人生と重ね合わせて、「覚悟して向き合えば決して悪いものでもない」と論じています。 

「ザ・シークレット」はいわゆる「引き寄せの法則」について初心者向けに書かれた本で、ルーツは「思考は現実化する」といった成功本とスピリチュアルを融合させた内容です。「こういうことが起こって欲しくない」と念じると「こういうこと」が起こってしまうので、「こうなって欲しい」とイメージしながら念じ続けるとその状態を「引き寄せる」ことが出来る、という内容です。 

ロンドンも不景気です。人と話すとリストラや、賃下げなど冴えない話ばかりが耳に入ります。自分の会社にしても、半年前と何も変っていない、むしろビジネスは上手く行っているのに、株価はかなり不安定です。今、経済や金融市場に起こりつつあることは、五木氏が指摘するように、数十年にわたる、資本主義社会の下降局面なのかも知れません。確かにそういう要素もあります。 

一方、「シークレット」的な見方をすると、不景気の「気」はあくまで気持ちの気であり、人々の悪い想像や「こうなって欲しくない」という念が世界的に現実化して、今の事態を招いていると説明できるかもしれません。確かに、リーマンショックの翌日から東京のタクシーの売上が目に見えて下がっているらしく、これはロジカルな説明は難しい現象だと思います。また、逆の見方をすれば、困難な現状に何がしかの光明を見出したい世相が、この本をベストセラーに押し上げているとも言えそうです。

 夕べ、ロンドンの米系運用会社のファンドマネジャーから、日系の運用会社のトレーダーに転職した20年来の友人とパブでぬるいビールを飲みながら話しました(何故かイギリスのビールは室温でぬるい・・)。彼はファンドマネジャーとして優秀だったのですが、日本に転勤を命じられて、家庭の事情でロンドンに残るために止む無く転職しました。大幅なベースダウンに見舞われながらも、結構明るく喋っていました。一般的に、一度上げた生活レベルは下げられない、などといいますが、彼を見ると、必ずしも真実では無いと思わせられました。

「収入の3分の一が、子供の教育費にかかっちゃいますよ~」と一人息子を有名なパブリックスクールに通わせていることが、彼の人生の支えの一つになっているようで、ある種の爽快感を覚えました。 彼の子供が通う有名パブリックスクールのPTA達も以前は、夫の収入を暗に自慢するSnobbishな奥様達が多かったのが、ここに来て不遇をかこっている人たちも増えてきているようで、謙虚な人たちが増えて逆に以前より付き合いやすくなった、と不景気の効用のようなことを言っていたのが面白かったです。 

企業や経済は、「成長」というものが当たり前のようにビルトインされています。日本の経済もたった半年間マイナス成長するだけで大騒ぎ。多くの企業も、収益が減っただけで大騒ぎです。赤字じゃなくて減収しているだけなのに。人間の方は、このロンドンの友人やPTA達もそうだけど、収入の範囲内で生活することで、何とか生活を適応させることが出来るようです。私自身の失業経験からも、数ヶ月の無収入の状況は、今思えば、それほど深刻なものではありませんでした。

騒いでいるのは、マスコミや官僚のような失業経験も無ければ、収入減の経験も無い人達がパニック的に騒いでいるような気もします。心のどこかで、資本主義の成熟や老化を意識しながらも、ネガティブなイメージを避けるように、悲観的なニュースフローからは当面を距離を置いた方が良いと思いました。


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容疑者Xの献身 - 東野圭吾 - [本・映画]

海外出張の時に成田で買って、そのまま読まずに置いてあったのを思い出して週末に読みました。最近文庫化された直木賞作品です。湯川教授という物理学者が謎解きをする「ガリレオ先生」シリーズで、映画化もされているようですが、殺人を扱っている上に多少、常軌を逸した結末も手伝って、重い印象です。エラリー・クイーンのドルリー・レーンとテイストを同じくする悲劇、もっと言えば、桐野夏生のようなハードボイルドな社会派のニオイもします。

読者が知らない事実が謎解きに使われることは無いため、フェアなストーリー展開ですが、警察の捜査がナカナカすすまないことで、完全に犯人のペースでゆっくりと話が進みます。読者は普通、その本の残りのページ数で、結末までの時間を無意識に感じるものですが、「このままで、本当に話が終わるのか?」と心配するほど、残りのページが少なくなっても、解決が遠く感じられます。しかし、エンディングはきっちりと決まっています。この話を「恋愛小説」として捉えると、もしかすると物足りないかも知れませんが・・・。

アマゾンを調べると、なんと267人もの人が感想を投稿しています。人気作家なんですね。福山雅治が湯川教授役で映画化・TVドラマ化されているようですが、ちょっとイメージと違う感じです。そっちは見ないかな。

週末朝起きてから、ランチタイムまでに読める本です。是非、手にしてみてください。


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おくりびと [本・映画]

今週末は久しぶりに八ヶ岳に行くつもりだったのですが、土曜の朝起きたら余りにも東京が涼しいのと、長旅の疲れが少し出たのとで、今週はオヤスミしました。次に行けるのは10月18日の週末で、多分紅葉まさっかりです。

ゴロゴロしていても仕方ないので、映画鑑賞。「おくりびと」を見てきました。主役は本木雅弘。納棺師というプロフェッショナルを主人公にしたお話です。葬儀や死を扱う映画ではあるのですが、ユーモアにあふれ、特に前半は笑うところばかり。恐らく葬儀を題材と扱いながらも、テーマは生きている人の躓いたり転んだりの生き様を扱っているからだと思います。「タブー」という言葉がありますが、私は、あらゆる職業に常に差別がつきまとうと思います。今であれば、投資銀行や証券会社だってそうです。そういった差別を克服出来るのは理念でも道徳でもなく、その職業についている人がその仕事を通じて尊敬を勝ち取るしかないということを、明るく感動的なタッチで教えられました。

山崎努、凄いです、何やらせても。広末涼子、賛否はあると思いますが目立ちすぎず素敵な奥さんでした。脚本はあの「料理の達人」の放送作家だった小山薫堂氏なんですね。あちこちに印象的な食事のシーンが出てきます。是非一度ご覧下さい。損はしないと思います。

 

 


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気骨の判決(新潮新書) [本・映画]

中学の歴史教科書で「大政翼賛会」なるものが戦時中あった、という記憶だけは残ってましたが、どういう経緯でどのように出来たのかはオボロゲな記憶でした。東条英機内閣が、反対勢力を封じ込め、議会を無力化することで、戦争を遂行するために、国会議員の80%を「推薦議員」と呼ばれる議員で占有する背景で、数々の選挙違反、妨害、脅迫などが行われていた実態を裁判を通じて明らかにし、国家に逆らう「違憲判決」を出した裁判官、吉田久に焦点を当てたノンフィクションです。
著者は清水聡氏というNHKの記者で、そのためか、小説にありがちな劇的なタッチでは書かれていない。どちらかというと、事実を積み重ねるアナリストのレポートのような筆致です。静かに、少しずつ内容に引き込まれていきます。そして事実だけが持つ重さ、感動を与えてくれます。こんなことが二度とあってはならない、と思わせる内容です。特に、マスコミと政治の距離感がおかしくなっている昨今、過去の悲劇をしっかりもう一度見つめなおす必要が今の日本にはあるのではないでしょうか。
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エンデュアランス号漂流記 [本・映画]

昔の仲間3人で食事に行った時に、私以外の二人が、この本を読んで感動した、といってひとしきり盛り上がっていました。何だか悔しいので、早速読んでみました。
「事実は小説より奇なり」という名言がありますが、まさにそれです。これがもしもフィクションだったら「そんな上手く行くはずが無いだろう」というぐらい奇跡的な生還劇です。
著者は探検隊の隊長自身(アーネスト・シャクルトン)。エンデュアランス号は、南極大陸探検への途上で浮氷に囲まれてスタックしてしまい、最後には氷圧に耐え切れず破壊され沈没してしまいます。見事なタイミングで船を見切り、不安定な浮氷の上にキャンプを張って流されるままに漂流し・・と話が続くのですが、常に氷点下の南氷洋で2年にも渡り漂流し、小船で果敢にも救助を求めて1000km以上の航海を行い、22名全員が最終的には救助されます。
シャクルトンは、その都度、極めて厳しい色々な選択を迫られるのですが、探検をあきらめた後は、22人全員を生還させるために考えられるベストの選択をしつづけます。隊員達の心と体の健康に最大限配慮しながら、冷静に希望を失わない態度はリーダーシップや使命感などという言葉が極めて軽く感じられます。
私も会社の撤退で、チームメンバーと4ヶ月間「漂流」をしたことがありましたが(笑)、命を取られるわけでも、お腹がすくわけでもないのに、不安にさいなまれたり、希望を失いかけたりしてましたので、シャクルトンの精神の100分の1でも。これからはマネ出来れば嬉しいなぉ、と思いました。あれだけのことを成し遂げたのに、著作自体は航海日誌のように淡々としていて、自己肥大しているところがありません。すんなりと心に染み込んでくる大冒険です。
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