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熊谷達也「邂逅の森」 [本・映画]

月夜の雪山は、漆黒の闇の中で銀色に浮かび上がっています。その風景を初めて見たとき、「怖い」と思いました。晴天の元でも、頂上から麓まで厳しい氷雪に覆われた山を仰ぎ見るとき、怖れと畏敬の念が湧いてきます。この感情というか感覚は、動物としての人間が先天的に持っているものでは無いでしょうか。

この小説は、過酷な秋田の冬山を舞台にした、マタギが主人公の話です。東北の寒村における貧困とはどういうものであったのかを、緻密に描きながら、明治・大正期のマタギというものを題材にした話なのですが、私にはラブストーリーと思えました。ただ、美しく現代的な「恋愛」などではなく、因習や貧困、義理人情や打算・・といったなかで細々としかし力強く続く多少動物的テイストの性愛のストーリーと言ったほうがいいかもしれません。 

熊狩りやカモシカ狩りの描写は見事です。リアルなだけでなく、生きているものの命を貰って生きていかなければならない人間にとっての自然への尊敬と畏怖がびしびしと感じられました。直木賞受賞作品です。


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